サブリース契約の落とし穴〈後編〉|解約・入居者・売却・裁判例と対策まとめ

前編では、サブリース契約の基本的な仕組みやマスターリース契約との違い、そして「家賃保証の減額」「修繕費負担」「誤解を招く30年保証」など典型的なトラブル事例を解説しました。
後編ではさらに踏み込み、**「なぜオーナーは解約できないのか」「サブリース会社は解約できるのか」「入居者が退去しても契約は続くのか」「物件売却に与える影響」**など、オーナーが契約後に直面する深刻な問題を掘り下げます。また、実際の裁判例や国のガイドラインを踏まえ、トラブルを避けるための具体的なチェックポイントと対策を紹介します。

この記事の内容

サブリース契約を解除できないトラブル

オーナーから一方的に解約できない理由

サブリース契約は「賃貸借契約」の一種とされるため、法律上は借主=サブリース会社が保護される立場にあります。
オーナーは貸主という立場ながら、解約の自由は大幅に制限されています。そのため「思ったより収益が減ったから解約したい」と考えても、契約条項に反して解約することは困難です。

中途解約条項はサブリース会社に有利

契約書には「サブリース会社は経営上必要と認めた場合、一定の予告期間をもって解約できる」と記されている一方、オーナー側は「契約期間満了時のみ解約可能」「解約時には違約金が必要」といった厳しい条件を課されていることが多いです。結果として、オーナーは事実上、契約に縛られ続ける立場になります。

更新時とは何か?実態は「二重構造」

一見すると「30年契約」と記載されていても、実際には「2年ごとの賃料見直し」という短期更新条項が組み込まれています。つまり、

  • 名目:30年の長期借上げ契約
  • 実態:2年ごとの条件変更可能な短期契約
    という二重構造です。サブリース会社は更新のたびに減額や解約を打ち出せる一方、オーナーは違約金なしで解約できない非対称な関係が生まれます。

裁判に発展するケースも

「家賃減額には応じられない」「契約そのものを解約したい」とオーナーが主張しても、サブリース会社がこれを拒否し、最終的に裁判にまで発展するケースが増えています。
実際の裁判では、サブリース契約は賃貸借契約の一種と位置付けられるため、借主にあたるサブリース会社の立場が保護されやすく、判決においては契約書に明記された条文が強く重視されます。
その結果、オーナーにとっては希望通りの解約が認められず、不利な判断となってしまう事例が少なくありません。
こうしたリスクを避けるためには、契約前に内容を十分に精査し、専門家にチェックしてもらうことが不可欠です。

サブリース会社はいつでも解約できるのか?

サブリース会社の解約権

多くの契約では「経営上必要な場合」「一定期間の空室が続いた場合」などを理由に、サブリース会社が解約できる条項が盛り込まれています。例えば「3か月前通知で解約可能」といった内容です。これにより、採算が取れなくなればサブリース会社は比較的容易に契約を終了させることができます。さらに、この条項はオーナーにとっては突然収益源を失うことを意味し、契約の安定性を大きく損なう要因となります。表面上は長期保証のように見えても、実態はサブリース会社に極めて有利な仕組みといえるのです。

オーナー側は厳しく制限

一方、オーナーからの解約は「契約期間満了時のみ」や「違約金を支払った場合のみ」といった厳しい条件が付きます。つまり「不動産会社は簡単に解約できるが、オーナーはできない」という非対称性が構造的に組み込まれています。この不平等な仕組みにより、オーナーは不利な条件を受け入れざるを得ず、長期間にわたって望まない契約を続けるリスクを抱えることになります。契約の柔軟性が一方的に制限されるため、将来的な資産運用の自由度も大きく奪われてしまうのです。

この非対称性が最大のリスク

この仕組みこそがサブリース契約最大の落とし穴です。表向きは「空室保証で安心」と見せながら、実際には不動産会社に有利なルールで設計されており、オーナーは契約から抜け出せなくなるリスクを抱えています。さらに、解約の自由が奪われていることで資産活用の選択肢が極端に狭まり、売却や再投資といった柔軟な判断が難しくなります。その結果、収益性の低下や資産価値の下落を受け入れざるを得ない状況に追い込まれる可能性が高まるのです。

入居者が退去してもマスターリース契約は続くのか?

入居者退去=契約終了ではない

サブリース会社とオーナーのマスターリース契約は、入居者の有無にかかわらず存続し続けるのが原則です。
たとえ入居者がゼロであっても、サブリース会社は契約上の借主という立場にあり、オーナーに対して賃料を支払い続ける義務を負うのが基本的な仕組みです。
これこそが「空室でも家賃保証」と宣伝される根拠になっています。ただし、契約書には例外的に『空室が一定期間以上続いた場合は契約を解除できる』といった特約が盛り込まれているケースもあり、必ずしも永久的に保証されるわけではありません。z
そのため、表面的な安心感に惑わされず、契約内容を丁寧に確認することが重要です。

オーナーが解約を望んでも難しい

入居者が退去して家賃収入が途絶え、サブリース会社からの支払いも滞るといった状況に陥っても、オーナー側から一方的にマスターリース契約を終了させることはできません。あくまで解約の可否は契約書に記された条文の内容によって左右され、多くの場合はサブリース会社に有利な条件が設定されています。そのため、オーナーは「収益が出ないのに契約だけは継続する」という不利な立場に追い込まれることも少なくありません。特に、違約金や長期の契約縛りが設けられていると、オーナーに残された選択肢は非常に限られてしまうのです。

サブリース契約と物件売却の関係

契約は売却しても承継される

サブリース契約は「物件に付随する契約」とみなされるため、オーナーが物件を売却して所有者が変わっても自動的に新しい買主にそのまま承継されます。つまり、購入した新しいオーナーは既存のサブリース会社との契約関係をそのまま引き継ぐことになり、基本的には契約内容を一方的に変更したり解除したりすることはできません。その結果、買主は自由な運営や賃料設定が難しく、物件の活用方法が大きく制約されてしまうのです。

売却価格が下がりやすい

サブリース付き物件は「自由に運営できない」「契約を簡単に解除できない」と判断されるため、投資家や購入希望者から敬遠されがちです。
その結果、市場での評価額は下がりやすく、通常の収益物件と比べると数百万円単位で安くしか売却できないケースも珍しくありません。
さらに、買主にとっては契約条件を変更できない制約や将来的な家賃減額リスクも考慮されるため、購入意欲が弱まり、想定以上に売却に時間がかかる可能性もあるのです。

売却自体が制限されるケース

契約書の内容によっては「オーナーが変わる場合にはサブリース会社の事前承諾を必要とする」といった条項が盛り込まれているケースもあり、その場合は物件の売却自体が自由にできなくなります。買主が見つかってもサブリース会社が承諾しなければ契約を進められず、取引が白紙になってしまうリスクすらあるのです。つまり、オーナーは本来自由に行えるはずの売却や資産の組み替えまで制限され、資産運用の柔軟性が大きく損なわれてしまいます。

実際の裁判例・国の注意喚起

消費者庁・国交省のガイドライン

消費者庁は「30年保証」といった誤解を招く広告表示を問題視。2020年の賃貸住宅管理業法により、サブリース業者は登録制となり、契約前説明義務が課されました。これにより、オーナー保護の観点から重要事項説明が強化され、安易な契約を防ぐための規制が整備されています。

裁判例の傾向

裁判例では「サブリース契約は賃貸借契約と同様に扱う」とされ、オーナーの解約請求が退けられるケースが多いです。つまり、契約書の内容次第でオーナーは強く拘束されることになります。特に中途解約条項や賃料改定条項の有無によっては、長期にわたり不利な条件を受け入れざるを得ない状況に陥ることもあります。

トラブルを避けるための実践的対策

契約前に必ず条項を精査する

  • 家賃減額条項
  • 中途解約条項
  • 修繕負担の範囲
  • 契約期間と更新条件

これらを事前に確認しなければなりません。

専門家にチェックしてもらう

契約前に弁護士や不動産コンサルタントにチェックを依頼すれば、将来のリスクをかなり減らせます。
専門家であれば契約条項の曖昧な表現や、オーナーにとって不利になりやすい条件を的確に指摘できますし、場合によっては代替案や修正交渉の余地についても助言してくれます。
特に長期契約となるサブリースでは、一度結んでしまうと解約が難しいため、事前の確認が安心につながります。

複数業者で比較する

1社の提示だけで決めず、複数のサブリース会社の条件を比較することが重要です。
各社によって保証賃料の算定方法や修繕費の扱い、契約更新時の条件変更の有無などが異なります。
そのため、複数の見積もりや契約書を照らし合わせることで、相場感を掴めるだけでなく、将来的に不利になりやすい条項を見抜くきっかけにもなります。時間と労力はかかりますが、後のトラブルを避けるためには必要なプロセスといえるでしょう。

サブリース以外の選択肢も検討する

自主管理や通常の管理委託と比べて、本当にサブリース契約にメリットがあるのかを冷静に考える必要があります。
自主管理であれば空室リスクや入居者対応の負担は大きいものの、家賃収入をすべて自分でコントロールできます。
管理委託の場合は、管理会社に入居者募集や日常のトラブル対応を任せつつも、収支の透明性を保ちやすく、契約内容も比較的柔軟です。
一方でサブリースは「空室保証」という安心感がある反面、保証賃料の減額や中途解約の制約など、長期的にはオーナーが不利になる場合も少なくありません。
そのため、他の管理方法と具体的に比較し、どの仕組みが自分の資産運用方針に最も合っているかを見極めることが欠かせません。

後編まとめ

サブリース契約は、表面的には「安心の家賃保証」と見せながら、実際にはオーナーが解約できない非対称性、入居者退去でも続く契約、売却価格を下げる制約など、数多くのリスクを抱えています。裁判例や国のガイドラインも示す通り、契約条項に強く縛られるため、安易にサインすることは危険です。

不動産オーナーが後悔しないためには、契約前に内容を徹底的に精査し、複数社比較と専門家チェックを欠かさないこと。サブリースは便利な仕組みですが、リスクを理解して慎重に利用することが求められます。

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この記事を書いた人

不動産業務歴(2010年~)
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不動産売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理
所属:株式会社セレクトビジョン 東京三協信用金庫本店ビル
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